中小企業の経営者は、自らの財産をすべてつぎ込み、会社の発展に努力してきた方が多いです。そのため、相続財産のほとんどが自社株式のことが多く、個人資産についても会社へ貸付を行っていたりと、会社経営とは切っても切り離せない場合が多いものです。
そのため、相続税を納税するために、会社の廃業や大幅な事業転換、さらには第三者への自社株式の譲渡とならざるを得ないケースも出てきました。
後継者へ会社を承継させるためには、経営権の問題として、自社株式を後継者へ移転し議決権を確保する経営上の視点と、会社が利用している経営者の個人資産を後継者へ移転するという財産上の視点の両面からの検討が必要です。
一番最初に遺言書の作成をお勧めします。次に、下記の対策を実行していきます。
経営権の問題として、後継者へ自社株式を移転する対策をまとめると以下のようになります。
01 後継者の明確化と経営権確保のための株式の移転方法の検討
02 株式評価額の引き下げ対策
03 株式を移転(相続・贈与・譲渡)
04 自社株式の納税猶予の検討
財産面の問題として検討しなければならない事項は以下のとおりです。
01 後継相続人以外の相続人に対する遺留分の問題
02 納税資金の確保の問題
2018年1月1日から2027年12月31日までの贈与・相続等により取得する非上場株式等について、10年間の特例措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限( 総株式数の3分の2まで) の撤廃や、納税猶予割合の引上げ(80% から100%)等がされた特例措置が創設されました。
現行の事業承継税制と特例事業承継税制では、下記の点が異なります。
現行事業承継税制 | 特例事業承継税制 | |
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納税猶予対象株式等の範囲 | 発行済み議決権株式総数の3分の2までの株式数 | 贈与・相続又は遺贈により取得したのすべての株式等 |
納税猶予割合 | ○贈与… 納税猶予対象株式等に係る贈与税の全額 ○相続… 納税猶予対象株式等の価額の80%に対応する相続税額 |
○贈与… 納税猶予対象株式等に係る贈与税の全額 ○相続… 納税猶予対象株式等の価額の全額に対応する相続税額 |
雇用確保要件 | 経営(贈与)承継期間(5年間)における常時使用従業員数の平均値が贈与・相続時の80%未満となる場合は、納税猶予取り消し | 経営(贈与)承継期間(5年間)における常時使用従業員数の平均値が贈与・相続時の80%未満となる場合でも、その理由を記載した書類を都道府県知事に提出すれば、納税猶予は継続 |
後継者の人数 | その会社の代表権を有する後継者1名のみに適用 | その会社の代表権を有する最大3名までに適用(10%以上の持株要件) |
特例経営承継期間経過後の減免要件 | 株式等の譲渡・合併、解散等の場合には、納税猶予の取消しとなり、原則として納猶予税額の全額納付 | その会社の事業継続が困難になる一定の要件に該当する場合には、株式等の譲渡・合併の対価又は解散時の株式評価額を基に、贈与税等の額を再計算し、その税額が当初の納税猶予税額を下回るときは、その差額を免除 |
相続時精算課税の適用対象者 | 贈与者が60歳以上の父母又は祖父母で、受贈者が20歳以上の推定相続人又は孫である場合に適用 | 贈与者が60歳以上で、受贈者が20歳以上の推定相続人以外の者の特例後継者株式等を贈与した場合にも適用 |
事前の承継計画の提出 | 不要 | 2018年4月1日から2025年3月31日までに特例承継計画の提出が必要 |
贈与等の適用期限 | 特になし | 2018年1月1日から2027年12月31日まで |
特例事業承継税制を適用するためには、原則として2025年3月31日までに認定経営革新等支援機関による所見を添付した「特例承継計画」を都道府県知事に提出しなければなりません。
当社は認定経営革新等支援機関となっておりますので、特例税制を受けたいと思われる方は是非相談にお越しください。